こんな方におすすめ
- 車中泊避難を防災の選択肢として考えている人
- 「災害時はとりあえず車で逃げればいい」と考えている人
- ハザードマップは見たが、停車場所まで落とし込めていない人
防災について考え始めると、多くの人はまず「何を買えばいいのか」に意識が向きます。防災リュック、水、非常食、モバイルバッテリー。情報も商品も豊富で、「備えた気になる」ことは簡単です。
しかし、実際の災害時に本当に困るのは、物がないことよりも動けなくなることです。特に車を使った避難や車中泊を想定している場合、「どこに車を止めるか」を考えていないと、その時点で選択肢が一気に消えます。
災害が起きた瞬間、道路状況は変わり、普段使えていた場所は使えなくなります。避難所、道の駅、コンビニといった“なんとなく安全そうな場所”も、状況次第で簡単に排除されます。そのとき、防災グッズをどれだけ揃えていても、止まる場所がなければ意味を持ちません。
この記事では、「防災グッズよりも先に考えるべき停車場所」という視点から、車中泊避難や車での一時退避がなぜ詰みやすいのか、そして何を事前に考えておくべきなのかを整理します。
防災を“物集め”で終わらせないための、現実的な話です。
目次
防災グッズがあっても“止められなければ意味がない”
防災というと、多くの人がまず思い浮かべるのは「何を持つか」です。防災リュック、水、非常食、モバイルバッテリー。確かにどれも重要ですが、それらはすべて**「使える場所にいられる」ことが前提**になっています。
特に車中泊避難を想定している場合、この前提が崩れると一気に意味を失います。
車は、移動できて、雨風をしのげて、プライバシーもある。だから「災害時は車に逃げればいい」と考える人は少なくありません。しかし現実には、車をどこに止められるかという問題に直面した瞬間、計画は簡単に破綻します。
災害時は、平常時には想像しにくい制限が一気に発生します。道路の封鎖、緊急車両優先による通行規制、駐車禁止の徹底、私有地への立ち入り制限。たとえ数時間前まで自由に出入りできた場所でも、「今はダメです」と言われることは珍しくありません。
ここで多いのが、「装備は万全なのに、結局どこにも止められなかった」というケースです。水も食料もあるのに、移動を繰り返すだけで体力と精神を消耗し、最終的に安全とは言えない場所に妥協して止める。これは防災としては最も避けたい状態です。
防災グッズは、停車場所が確保できて初めて意味を持ちます。にもかかわらず、停車場所は「なんとかなるだろう」と後回しにされがちです。この優先順位の逆転こそが、車中泊避難の最大の落とし穴だと言えます。
避難所・道の駅・コンビニは本当に安全か?
災害時の停車場所として、よく名前が挙がるのが「避難所」「道の駅」「コンビニ」です。一見すると合理的に思えますが、実際にはどれも不確定要素が非常に多い場所です。
まず避難所ですが、原則として「人が避難する場所」であり、車中泊を想定していないケースがほとんどです。校庭や駐車場が使えたとしても、台数制限があったり、後から来た人は入れなかったりします。また、避難所運営が始まると、車の移動を制限されることもあります。
道の駅も同様です。平時は車中泊が黙認されている場所でも、災害時には状況が一変します。支援物資の集積所になったり、緊急車両の拠点になったりすれば、一般車両は排除されます。「トイレがあるから安心」という前提も、停電や断水で簡単に崩れます。
コンビニについても、「24時間営業」「トイレが使える」というイメージが強いですが、災害時には営業停止、トイレ使用禁止、駐車場閉鎖が当たり前のように起こります。そもそも私有地であり、長時間の滞在は想定されていません。
ここで重要なのは、これらの場所が「善意で使わせてもらっている」という点です。ルールや状況が変われば、いつでも使えなくなる。その不安定さを理解せずに、停車場所の前提にしてしまうことが危険なのです。
災害時に“安全な停車場所”の条件とは何か
では、災害時に比較的安全と言える停車場所には、どのような条件が必要なのでしょうか。重要なのは「有名な場所」ではなく、「状況に耐えられる場所」です。
まず第一に、自然災害リスクが低いこと。ハザードマップで浸水・土砂災害・津波の想定区域に入っていないかは最低限の確認事項です。意外と見落とされがちですが、「道路は大丈夫でも、周囲が危険」という場所は少なくありません。
次に、倒壊物が少ないこと。看板、ブロック塀、老朽化した建物、街路樹など、強風や余震で倒れる可能性のあるものが周囲にないかを見ます。広く見えても、実は危険要素だらけという場所もあります。
三つ目は、孤立しすぎないこと。完全に人の気配がない場所は、治安や体調不良時のリスクが高まります。一方で、人が多すぎる場所もトラブルの元になります。程よく人目があり、逃げ道が複数あることが理想です。
最後に、移動の選択肢が残されていること。一本道の先や袋小路は、状況悪化時に詰みます。複数方向へ抜けられるかどうかは、精神的な余裕にも直結します。
安全な停車場所とは、「完璧な場所」ではなく、「最悪の状況でも耐えられる場所」です。その視点で見直すことが、防災の質を大きく変えます。
自宅周辺で“事前に考えておくべき停車候補”
災害時、多くの人が「遠くへ逃げる」ことを考えます。しかし実際には、遠くへ行くほど不確定要素は増えます。渋滞、道路封鎖、燃料不足。これらを考えると、まずは自宅周辺で完結する避難を想定する方が現実的です。
理想は、自宅から徒歩圏、もしくは車で5〜10分圏内に複数の停車候補を持っておくことです。1か所に依存せず、状況に応じて切り替えられるようにしておくことが重要です。
候補を考える際は、「平時に止められるか」ではなく、「災害時に問題になりにくいか」という視点が必要です。例えば、月極駐車場、企業の敷地、使われていない広めの空き地なども、条件次第では候補になります。
ただし、私有地である以上、勝手に使えるとは限りません。だからこそ、事前に考えておくこと自体が重要なのです。現実的な候補を洗い出し、「ここはダメになったら次」という順番を頭に入れておくだけでも、判断速度が大きく変わります。
災害時に必要なのは、完璧な正解ではなく、迷わず動ける準備です。停車候補を考えることは、その準備そのものです。
停車場所を考えると、防災グッズの中身が変わる
停車場所を具体的に想定すると、防災グッズの考え方も大きく変わります。なぜなら、「どこで過ごすか」によって必要な装備がまったく異なるからです。
例えば、比較的安全な場所で長時間停車できる前提なら、快適性を重視した装備が有効です。寒さ対策、目隠し、簡易トイレ、電源確保。一方で、短時間で移動を繰り返す前提なら、荷物は最小限に絞る必要があります。
多くの防災セットが「誰にでも同じ内容」になっているのは、この前提が抜け落ちているからです。停車場所を決めずにグッズを揃えると、結果として「重いだけ」「使いにくいだけ」になります。
本来、防災グッズは目的別に考えるべきものです。そしてその目的は、「どこに止まり、どう過ごすか」から逆算されます。停車場所を考えることで、無駄な装備が減り、本当に必要なものが見えてきます。
防災とは、物を揃える行為ではなく、行動を設計することです。停車場所を起点に考えることで、防災は初めて現実的なものになります。
まとめ
防災で最も危険なのは、「準備したつもり」になることです。
防災グッズを揃えても、停車場所を考えていなければ、実際の災害時に動けなくなります。
「どこに止められるか」
「どこで時間をやり過ごすか」
この2つを考えることが、車中泊避難・防災の出発点です。
停車場所を考えることで、避難行動も、防災グッズも、現実に即した形へと変わります。
防災は知識ではなく、設計です。
まずは地図を見て、自宅周辺の停車場所から考えてみてください。